サンクコストの誤謬と恋愛
Sunk Cost Fallacy
回収不能な過去の投資に引きずられて、合理的でない判断を続けてしまう認知の罠
4コマまんがで理解する「サンクコストの誤謬」

定義
既に支払われ回収不能なコスト(時間・金銭・労力)に影響されて、将来の損失を拡大させる不合理な意思決定を続けてしまう認知バイアス。
メカニズム
サンクコストの誤謬は複数の心理メカニズムから生じる。第一に、損失回避:投資を無駄にすることが「損失」と感じられるため、損切りを避けようとする。第二に、自己正当化:過去の判断が間違いだったと認めることへの抵抗。第三に、完了欲求:始めたことを終わらせたいという心理的衝動。さらに、コミットメントと一貫性の原理も関与しており、一度コミットした方針を変更することへの心理的コストが高い。
代表的な実験
シーズンチケット実験
手続き: 劇場のシーズンチケット購入者に、通常価格・割引価格・無料の3条件を設定。その後のシーズン中の観劇回数を追跡した
結果: 通常価格で購入した群はシーズン前半により多く観劇したが、後半になると差が消失した。金銭的サンクコストの心理的影響が時間とともに減衰することを示した
Organizational Behavior and Human Decision Processes, 35(1), 124-140
10ドル vs 投資シナリオ実験
手続き: 被験者にスキー旅行のシナリオを提示。100ドルのミシガン旅行と50ドルのウィスコンシン旅行を両方購入後、日程が重なったことが判明。どちらに行くか選択させた
結果: 過半数がより高額(100ドル)のミシガン旅行を選択。ウィスコンシンの方が楽しそうだと答えた人でも、投資額の大きい方を選んだ
Organizational Behavior and Human Decision Processes, 35(1), 124-140
エビデンスの強さ
Roth et al. (2015) のメタ分析では、サンクコスト効果の効果量はd = 0.33(小〜中程度)。金銭的コストより時間・労力のサンクコストの方が効果が大きい傾向がある。また、個人的に投資の意思決定に関与した場合に効果が強まる。
恋愛での活用パターン
関係の見直し
「過去の時間を除外して、今日この人と出会ったとしたら付き合うか?」と自問する
片思いからの撤退判断
具体的な期限を事前に設定し、変化がなければ次に進む
結婚生活の改善
「これまでの不満」ではなく「これからの1年をどう過ごしたいか」を話し合う
やりがちな間違い
安易な損切り推奨
「サンクコストだから別れなよ」と他人の長期関係を軽々しく否定する
完璧主義的な損切り
少しでも不満があるとすぐ「損切り」して関係をリセットする
過去の投資の持ち出し
喧嘩中に「あれだけしてあげたのに」と過去の投資を返済要求する
適用の限界
子供(特に幼児)はサンクコストの誤謬を示さない傾向があり、発達とともに獲得される可能性がある。うつ傾向の高い人は損切りが早い(反芻思考により過去の投資を否定的に評価するため)。また、投資が自己アイデンティティに深く結びついている場合、サンクコスト効果が特に強くなる。
参考文献 (2件)
- Arkes, H.R. & Blumer, C. (1985). The Psychology of Sunk Cost. Organizational Behavior and Human Decision Processes.
- Kahneman, D. & Tversky, A. (1979). Prospect Theory: An Analysis of Decision under Risk. Econometrica.
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