行動経済学中級

後悔回避と恋愛

Regret Aversion

意思決定の結果として生じうる後悔を事前に予測し、後悔を最小化するように選択する心理傾向。行動より不作為が選ばれやすい。

片思いデート前交際中マッチングアプリ夫婦同棲

4コマまんがで理解する「後悔回避

後悔回避を恋愛シーンで解説する4コマまんが
Graham LoomesRobert SugdenDavid Bell

定義

意思決定において、選択の結果生じうる後悔を事前に予測し、その予期的後悔を最小化する方向に判断が歪む心理傾向。特に行動による後悔より不作為の方が安全と感じられる。

メカニズム

後悔回避は複数のメカニズムから構成される。第一に、反実仮想(counterfactual thinking):「もし別の選択をしていたら」という想像が後悔の源泉となる。容易に想像できる反実仮想ほど後悔が強い。第二に、省略バイアス(omission bias):行動による悪い結果は不作為による同等の結果より強い後悔を生む(短期的には)。第三に、責任の帰属:能動的な選択の結果は自分の責任と感じやすく、不作為の結果は外部要因に帰属しやすい。しかし Gilovich & Medvec (1995) が示したように、長期的には不作為の後悔の方が行動の後悔を上回る。これは行動の後悔は合理化・学習により軽減されるが、不作為の後悔は「もし○○していたら」という永続的な想像を生むためである。

代表的な実験

行動 vs 不作為の後悔の時間変化

1995

Gilovich, T. & Medvec, V.H.

手続き: 被験者に人生で最も後悔していることを「行動したこと」と「行動しなかったこと」に分類させた。短期的な後悔と長期的な後悔を分けて調査
結果: 短期的には行動の後悔が多かったが、長期的(人生全体)では不作為の後悔が約75%を占めた。「やらなかった」後悔は時間とともに増大する

Psychological Review, 102(2), 379-395

株式投資の後悔と意思決定

1996

Zeelenberg, M., Beattie, J., van der Pligt, J., & de Vries, N.K.

手続き: 被験者に株式投資シナリオを提示。保有株の売買による損失と、売買しなかったことによる同額の損失の後悔を比較
結果: 同じ金額の損失でも、行動(売買)による損失の方が不作為による損失より強い後悔を生んだ。省略バイアスが確認された

Organizational Behavior and Human Decision Processes, 65(2), 148-158

エビデンスの強さ

Gilovich & Medvec (1995) の調査では、人生で最も大きな後悔の約75%が「行動しなかったこと」に分類された。Zeelenberg et al. (2002) のレビューでは、後悔回避が意思決定に与える影響は中程度(d = 0.3〜0.5)だが、意思決定の重要度が高いほど効果が強まる。

恋愛での活用パターン

告白の決断

「5年後の自分はどちらを後悔するか」と時間軸を延ばして自問する

短期的には不作為が安全だが、Gilovichの研究が示すように長期的には「やらなかった後悔」が圧倒的に大きい

関係の進展

「最悪のケース」と「最善のケース」を両方書き出し、行動しない場合のコストも明確にする

後悔回避は行動のリスクだけを過大評価する。不作為のリスクも可視化することでバランスの取れた判断ができる

パートナーへの謝罪

「謝らなかったら」の将来を想像してから行動する

謝罪は短期的に苦痛(行動の後悔リスク)だが、長期的には関係修復の鍵。不作為のコストの方が大きい

やりがちな間違い

完璧な選択の追求

「後悔しない選択」を追求するあまり決断できなくなる

全ての後悔を排除する選択は存在しない。後悔の最小化ではなく、価値の最大化を基準にすべき

不作為の正当化

「まだタイミングじゃない」と行動しない理由を繰り返す

後悔回避による不作為の合理化。「今行動しないコスト」を計算する習慣をつける

過去の後悔への執着

「あの時ああしていれば」と過去の反実仮想に囚われ続ける

後悔の反芻は現在の意思決定を歪める。過去から学びつつ、将来の選択に集中する

適用の限界

意思決定の可逆性が高い場合(やり直しが容易な場合)は後悔回避が弱まる。フィードバックが得られない場合(選ばなかった選択肢の結果がわからない場合)も反実仮想が困難なため後悔が弱い。また、後悔への感受性には個人差があり、「後悔を感じやすい」特性はBig Fiveの神経症傾向と正の相関がある。

参考文献 (2件)
  • Loomes, G. & Sugden, R. (1982). Regret Theory: An Alternative Theory of Rational Choice Under Uncertainty. Economic Journal.
  • Bell, D.E. (1982). Risk, Return, and Regret. Management Science.

この理論をあなたの状況に当てはめてみよう

無料で恋愛相談する