恋愛・関係心理学入門

情熱的愛と友愛的愛と恋愛

Passionate vs Companionate Love

恋愛には生理的覚醒を伴う「情熱的愛」と、深い愛着・信頼に基づく「友愛的愛」の2種類があり、時間とともに前者から後者へ移行するという理論

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4コマまんがで理解する「情熱的愛と友愛的愛

情熱的愛と友愛的愛を恋愛シーンで解説する4コマまんが
Elaine HatfieldElaine Walster

定義

恋愛を、強い生理的覚醒と没頭を特徴とする「情熱的愛」と、深い信頼・愛着・親密さを特徴とする「友愛的愛」の2種類に分類する理論。

メカニズム

情熱的愛の神経基盤はドーパミン報酬系(腹側被蓋野→側坐核)の強い活性化にある。フィッシャーらのfMRI研究では、恋愛初期の被験者がパートナーの写真を見た際に報酬系が顕著に活性化した。この活性化パターンは薬物依存と類似しており、「恋は一種の中毒」とも形容される。しかし、ドーパミン系は馴化(habituation)を起こす性質があり、同じ刺激への反応が時間とともに減弱する。これが情熱的愛の12〜18か月での減退を説明する。一方、友愛的愛はオキシトシン・バソプレシン系と関連し、これらは反復的な身体的接触・共有体験によって継続的に分泌される。つまり、情熱的愛は「新奇性への反応」、友愛的愛は「親密さの蓄積」に基づく。ハットフィールドのPassionate Love Scale(PLS)は、認知的要素(相手への没頭)、感情的要素(強い感情の起伏)、行動的要素(相手への接近行動)の3側面で情熱的愛を測定する。

代表的な実験

情熱的愛尺度(PLS)の開発と妥当性検証

1986

Hatfield, E. & Sprecher, S.

手続き: 大学生120名を対象に30項目のPassionate Love Scale(PLS)を開発。内的一貫性、因子構造、関連尺度との相関を検証し、恋愛中の被験者とそうでない被験者の得点を比較した
結果: PLSのクロンバックαは.91と高い内的一貫性を示した。恋愛中の被験者は非恋愛中の被験者より有意に高いPLS得点を示し、尺度の弁別妥当性が確認された。交際期間とPLS得点には負の相関があった

Journal of Adolescence, 9(4), 383-410

情熱的愛の文化横断研究

1995

Sprecher, S., Aron, A., Hatfield, E., Cortese, A., Potapova, E., & Levitskaya, A.

手続き: アメリカ・ロシア・日本の大学生合計1,667名を対象にPLSを実施。情熱的愛の強度と文化、性別、関係段階の関連を検討した
結果: 3文化全てで情熱的愛が確認されたが、アメリカの被験者が最も高い得点を示した。全文化で交際期間と情熱的愛に負の相関が確認され、情熱的愛の時間減退は文化普遍的であった

Personal Relationships, 2(1), 29-46

エビデンスの強さ

Hatfield & Sprecher (1986) のPLS研究では、恋愛中/非恋愛中の弁別効果量は d = 1.2 以上(大)。Sprecher et al. (1995) の文化横断研究では、交際期間と情熱的愛の負の相関は r = -.20〜-.30(3文化共通)。Acevedo & Aron (2009) のメタ分析では、情熱的愛と関係満足度の相関は r = .56、友愛的愛と関係満足度の相関は r = .32で、情熱的愛が減退しても維持されている長期カップルの満足度が最も高かった。

恋愛での活用パターン

交際1年目の「ドキドキが減った」時期

情熱的愛の減退は神経化学的に正常なプロセスだと理解し、代わりに友愛的愛(安心感・信頼の深まり)の成長に注目する

ドーパミン系の馴化は普遍的現象であり「冷めた」証拠ではない。友愛的愛の指標(一緒にいる安心感、深い会話の増加等)を評価基準にすると関係への満足度が回復する

長期関係での情熱の再活性化

2人で新しい体験を共有する(旅行先を変える、一緒に新しい趣味を始める、いつもと違うデートをする等)

新奇な共有体験はドーパミン系を再活性化させる(Aron et al., 2000の実験で確認)。日常のルーティンを意識的に破ることで「成熟した情熱」を維持できる

友愛的愛の意識的な構築

日常の中でパートナーへの感謝を言語化し、身体的な接触(ハグ、手をつなぐ等)を意識的に維持する

オキシトシン系は反復的な身体的接触と感謝の表現によって活性化される。友愛的愛は放置しても自然に育つものではなく、日常的な投資が必要

やりがちな間違い

情熱的愛の消失を関係の終わりと判断

「もうドキドキしないから好きじゃなくなった」と早期に関係を終了する

情熱的愛の減退は12〜18か月で普遍的に起こる。これを「愛の消失」と混同して関係を終わらせると、どの関係でも同じパターンを繰り返す(シリアルロマンティスト)

友愛的愛の軽視

「ドキドキしない愛は本当の愛じゃない」と友愛的愛を二流の愛として扱う

友愛的愛は情熱的愛の「残りかす」ではなく、質的に異なる深い絆。長期的な関係満足度と幸福感の予測因子として情熱的愛と同等以上の重要性がある

情熱の維持をパートナーに要求

「もっとロマンチックにして」「付き合い始めの頃のようにして」とパートナーに情熱の演出を強要する

情熱は二人の関係性から生まれるものであり、一方的に要求するものではない。新奇な体験の共有など、双方の努力で再活性化するアプローチが効果的

適用の限界

情熱的愛から友愛的愛への移行は不可逆的ではない。Acevedo & Aron (2009) の研究では、20年以上の長期関係でも情熱的愛を高いレベルで維持しているカップルが存在し、彼らの関係満足度が最も高かった。ただし、これは初期の「のぼせ」とは質的に異なる「成熟した情熱」であり、不安やオブセッションの要素は低い。情熱的愛の減退速度には個人差・文化差があり、新奇な共有体験の導入で減速できる。友愛的愛が十分に発達しないまま情熱が減退すると、関係の空洞化が起こる。

参考文献 (2件)
  • Walster, E. & Walster, G.W. (1978). A New Look at Love. Addison-Wesley.
  • Hatfield, E. & Sprecher, S. (1986). Passionate Love Scale: Measuring the Experience of Being in Love. Journal of Adolescence.

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