保有効果と恋愛
Endowment Effect
自分が所有しているものを、所有していないときよりも高く評価する心理傾向。手放す痛みが獲得の喜びを上回る。
4コマまんがで理解する「保有効果」

定義
自分が所有しているものに対して、所有していない場合と比較して不釣り合いに高い価値を付与する認知バイアス。損失回避の一形態。
メカニズム
保有効果は損失回避と密接に結びついている。所有物を手放すことは「損失」として処理され、損失の心理的重みが利得の約2倍であるため、売値と買値に大きな乖離が生じる。Morewedge & Giblin (2015) のレビューでは、所有による心理的結合(psychological ownership)が鍵であり、物理的所有がなくても「自分のもの」と感じるだけで効果が発生する。また、所有期間が長いほど効果が強まる傾向があり、これは単純接触効果や自己との同一視が関与している。進化的には、獲得した資源を保持する傾向が生存に有利だったと考えられる。
代表的な実験
マグカップ実験
手続き: 被験者の半数にマグカップを渡し売値を設定させ、残り半数に買値を設定させた。市場均衡での取引量も測定
結果: 売り手の希望価格(中央値$7.12)は買い手の支払意思額(中央値$2.87)の約2.5倍。経済理論の予測よりも取引量が大幅に少なかった
Journal of Political Economy, 98(6), 1325-1348
WTA/WTP比率のメタ分析
手続き: 45の実験研究から、支払意思額(WTP)と受入補償額(WTA)の比率を体系的にレビューした
結果: WTA/WTP比率の中央値は約2.6。通常の私的財で約2.0、健康・安全に関する財で約10.0と、財の種類によって大きな差が見られた
Journal of Environmental Economics and Management, 44(3), 426-447
エビデンスの強さ
Morewedge & Giblin (2015) のレビューでは、保有効果は堅牢に再現される現象であり、WTA/WTP比率は平均して2〜3倍。ただし、交換経験が豊富なトレーダーでは効果が減衰する(List, 2003)。
恋愛での活用パターン
関係への感謝の表現
パートナーとの関係を「もし今日初めて出会ったら」と想像し、改めて感謝を伝える
別れた後の冷静な評価
元パートナーとの関係の良かった点・悪かった点を客観的にリスト化する
プレゼントの選び方
相手が「自分のもの」と感じられる体験やカスタマイズされたアイテムを贈る
やりがちな間違い
所有欲の混同
パートナーを「自分のもの」として独占的にコントロールしようとする
失った関係への執着
別れた後も「あの人は特別だった」と過大評価し、新しい関係に進めない
変化への過剰な抵抗
「今の関係を変えたくない」と問題のある現状に固執する
適用の限界
市場での取引経験が豊富な人(プロのトレーダー等)では保有効果が弱まる。所有物が交換目的で取得された場合(転売用の商品等)は効果がほぼ消失する。また、所有期間が極めて短い場合や、対象物への感情的愛着がない場合にも効果は減衰する。文化差も報告されており、個人主義文化で効果が強い傾向がある。
参考文献 (2件)
- Kahneman, D., Knetsch, J.L., & Thaler, R.H. (1990). Experimental Tests of the Endowment Effect and the Coase Theorem. Journal of Political Economy.
- Thaler, R.H. (1980). Toward a Positive Theory of Consumer Choice. Journal of Economic Behavior & Organization.
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