行動経済学中級

おとり効果と恋愛

Decoy Effect (Asymmetric Dominance)

比較対象として劣った選択肢(おとり)を加えることで、特定の選択肢の魅力が相対的に高まる現象。

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4コマまんがで理解する「おとり効果

おとり効果を恋愛シーンで解説する4コマまんが
Joel HuberJohn PayneChristopher Puto

定義

選択肢群に、ある特定の選択肢(ターゲット)に対してのみ明確に劣る代替案(おとり=デコイ)を追加すると、ターゲットの選択確率が有意に上昇する効果。

メカニズム

おとり効果は「正当化容易性」と「関係的比較」の2つのメカニズムで説明される。第一に、おとりの存在によりターゲットが「明確に優れている」選択肢として比較可能になり、選択の正当化が容易になる。第二に、人は選択肢を絶対的な属性値ではなく、他の選択肢との相対的な関係で評価する傾向がある。Simonson (1989) は、この効果が「理由に基づく選択(reason-based choice)」として、他者への説明が容易な選択肢が好まれるメカニズムに起因することを示した。脳科学的には、おとりの追加が評価の枠組み自体を変えることがfMRI研究で確認されている。

代表的な実験

非対称的優越の発見実験

1982

Huber, J., Payne, J.W., & Puto, C.

手続き: ビール・自動車・レストランなどの製品カテゴリで、2つの選択肢に対し、一方にのみ劣るおとり選択肢を追加した条件と追加しない条件で選好を比較
結果: おとりが追加されると、おとりに対して優越するターゲットの選択率が有意に上昇。合理的な経済理論(正則性条件)に反する結果

Journal of Consumer Research, 9(1), 90-98

エコノミスト購読プラン実験

2008

Ariely, D.

手続き: MITの学生にエコノミスト誌の購読プランを提示。(A)Web版$59、(B)印刷版$125、(C)Web+印刷版$125。おとり(B)を外した場合と比較
結果: おとり(B)がある場合、(C)の選択率が84%。おとりを外すと(A)が68%に。おとりは実際にはほとんど選ばれないが、(C)の魅力を劇的に高めた

Predictably Irrational, HarperCollins

エビデンスの強さ

Huber et al. (1982) の原論文では、おとりの追加によりターゲットの選択率が2〜15ポイント上昇。Frederick et al. (2014) のレビューでは効果は堅牢だが、文脈依存的で効果量にはばらつきがある(d = 0.2〜0.6程度)。

恋愛での活用パターン

自分の強みの文脈設計

自分が輝けるシチュエーション(得意な話題、好きな場所)でデートを提案する

自分の長所が自然に際立つ文脈を選ぶことで、比較対象に対する相対的な魅力が高まる

提案の仕方

デートプランを提案する際、本命のプランと「明らかに劣るが似た」プランを含めた3択にする

おとり効果により本命プランの魅力が相対的に高まり、相手が選びやすくなる

自己理解を深める

自分の判断が「比較対象」に影響されていないか定期的に振り返る

おとり効果を知ることで、相対的な比較に流されず、絶対的な基準で相手を評価できるようになる

やりがちな間違い

友人を利用した比較操作

自分をよく見せるために魅力的でない友人を同行させる

人間関係を道具化する行為であり、友人への裏切り。発覚すれば全ての信頼を失う

元恋人との比較を煽る

「元カレ/元カノはこうだった」とおとりとして持ち出し、自分の優位性をアピールする

比較対象を作ることで自分の魅力を上げようとする行為は不安の表れであり、逆効果

条件の比較ゲーム

「他のアプリの人はこうだけど、自分はこう」と比較優位をアピールし続ける

関係は競争ではない。比較による魅力は一時的であり、内在的な価値を磨くべき

適用の限界

選択肢間の属性差が非常に大きい場合や、消費者の好みが明確に確立されている場合はおとり効果が弱まる。選択の重要度が高く十分に熟慮する場合にも効果が減衰する。また、選択肢を同時に提示する場合に効果が強く、逐次的に提示する場合は弱まる傾向がある。

参考文献 (2件)
  • Huber, J., Payne, J.W., & Puto, C. (1982). Adding Asymmetrically Dominated Alternatives: Violations of Regularity and the Similarity Hypothesis. Journal of Consumer Research.
  • Simonson, I. (1995). Let Us Not Forget They Are Not Real: Applying Lessons of Deception Research to the Study of the Attraction Effect. Journal of Marketing Research.

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