認知負荷理論と恋愛
Cognitive Load Theory
作業記憶の容量制限に基づき、情報処理の負荷が過大になると判断力が低下する理論
4コマまんがで理解する「認知負荷理論」

定義
人間の作業記憶(ワーキングメモリ)の情報処理容量には限界があり、処理すべき情報量が容量を超えると学習・判断・意思決定の質が著しく低下するという認知理論。
メカニズム
作業記憶は約4チャンク(Cowanの推定)の情報を同時に保持・処理できる。認知負荷には3種類ある。(1) 内在的負荷:課題の要素間の相互作用から生じる不可避な負荷。(2) 外在的負荷:不適切な情報提示や無関係な処理から生じる無駄な負荷。(3) 生成的負荷:スキーマの構築と自動化に寄与する有益な負荷。3つの合計が作業記憶の容量を超えると、パフォーマンスが急激に低下する。感情的な処理も認知資源を消費するため、ストレスや怒りは利用可能な認知資源を大幅に減少させる。
代表的な実験
問題解決における目標自由効果
手続き: 数学の問題解決で、特定のゴールが設定された条件(目標あり)と自由にどんな結果でも求めてよい条件(目標自由)を比較した
結果: 目標自由条件の方が学習効果が高かった。特定ゴールの追求は手段・目的分析に認知資源を費やし、スキーマ形成のための生成的処理が阻害されることが示された
Cognitive Science
自我消耗と認知負荷の相互作用
手続き: 自己制御課題(感情の抑制、思考の抑制等)を行った後に、別の認知課題や自己制御課題のパフォーマンスを測定
結果: 先行する自己制御課題で認知資源が消耗した被験者は、後続の課題のパフォーマンスが有意に低下した。認知資源は有限であり、消耗は領域横断的に影響することが示された
Journal of Personality and Social Psychology
エビデンスの強さ
Sweller (1988) の目標自由効果は教育研究で堅牢に再現されている。Baumeister et al. (1998) の自我消耗研究では先行する自己制御がパフォーマンスを中程度低下させた(d = 0.6前後)。ただし自我消耗効果の再現性には議論がある(Hagger et al., 2016のRRR)。
恋愛での活用パターン
大事な話し合い
お互いが休息後で認知的余裕がある時間を選ぶ(休日午前中、夕食後1時間等)
喧嘩のタイムアウト
感情が高ぶったら「20分休憩しよう」と提案する
質の高い対話
会話の時はスマホを別室に置き、テレビを消す
やりがちな間違い
疲労時の重要な話
仕事で疲れた帰宅直後にパートナーと関係の問題について話し合う
ながら会話
スマホを見ながら「聞いてるよ」とパートナーの話を聞く
感情的な議論の継続
お互い怒りが頂点の時にそのまま議論を続ける
適用の限界
タスクの自動化が進んでいる(熟練している)場合、認知負荷は低減する。また、情報が長期記憶のスキーマとして統合されている場合は、作業記憶への負荷が減少する(expertise reversal effect)。モチベーションが非常に高い場合は一時的に処理能力が向上する可能性があるが、持続的ではない。
参考文献 (2件)
- Sweller, J. (1988). Cognitive load during problem solving: Effects on learning. Cognitive Science.
- Sweller, J. (1994). Cognitive load theory, learning difficulty, and instructional design. Learning and Instruction.
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